円高……空洞化
日産は、国内生産台数を現在の年間約100万台から120万台に引き上げる計画だったが、カルロス・ゴーンCEOは、この国内生産台数を減らすことを示唆している。
理由は現在の超円高のせいだ。
『国内生産300万台死守』を掲げるトヨタの豊田章男社長も、今のレートでは『国内生産が成り立たない』と発言している。
現在の為替レートは、1ドル=77円前後の水準だ。これは銀行で換金するときに使われるレートで、『名目』為替レートだ。では、実際の通貨の価値はどうか。物価指数を勘案したレートは、『実質』為替レートと呼ばれる。
世界がインフレのなか、日本はデフレ傾向にある。つまり、かの国ではドルの通貨価値が下がり、一方日本では円の通貨価値が上がっている。従って、レートが円高傾向に動くからといって、実際に『円高』とは限らないのだ。
実質レートの計算方法はあまたあるが、その中でもユニークかつ分かりやすいものに、英国エコノミスト誌の『ビッグマック指数』がある。世界中で売られているビッグマックの値段で通貨価値を見るというものだ。これで行くと、アメリカではビッグマック一個が4.07ドル、日本では320円、なので、ビッグマック為替レートは、1ドル=78.7円である。ちなみに韓国は、1ドル=910ウォン、中国は、1ドル=3.60元となる(2011/07)。現在の名目レートは、1ドル=77円=1164ウォン=6.37元だから、日本円は実質と名目がほぼ一致、韓国ウォンは超ウォン安、中国も超超元安だ。中国は固定レート、韓国も輸出産業育成のため、国策としてウォン安を主導してきた結果だろう(日本潰し。輸入品が高くなるので、国内はインフレになるのだが)。
さて、ビッグマック指数はかなり特殊な例だ。一般には、実質レートの算出には消費者物価指数などが使われる。それで行くと、日本円の実質レートはおおむね1ドル=105円、韓国ウォンは1ドル=930ウォン程度だろうか。
この実質レートで考えると、日本で200万円のクルマのアメリカでの適正価格は19000ドル程度になるが、実際には名目レートが適用されるから26000ドルにもなってしまう。一方、同等の韓国車は15200ドル程度で売ることが出来る。
本来はどちらも19000ドルのクルマなのに、日本車は26000ドル、韓国車は15200ドルの値札が付く。同じ車格のクルマなのに10000ドル(実質レートでおおよそ105万円)もの価格差が付いたら、勝負にならない。それを狙って韓国政府はウォン安を推し進めてきたわけだ。
日本政府はこの未曾有の円高に対して有効な手を打てずにいる。まさかビッグマックレートを基準に考えている訳でもあるまいに。
日産は新たにブラジルに工場を建設するらしい。インフィニティの小型車の車台はダイムラー製(ベンツ)になる。日本人はどうやって食べていけばよいのか。政府にビジョンはあるのだろうか。
横浜市食肉市場に入っていくブタたち。屠畜されちゃうと思うと、ちょっと可愛そうにもなるが、「美味しいお肉になるんだよ」と、そっと心の中で手を合わせる。 |
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